近年、職場や教育現場、家庭においてストレスが増えつつあり、心の病がしばしば話題とされます。心の病は、ゆっくり症状が進み、痛みも感じないために、身体の病気よりも気づきにくく、放置されがちです。しかし、段々と日常生活や仕事に支障をきたすようになり、休職や休学につながることもあります。
自分の調子の悪さに気づいたとき、何か手を打たなくてはと思いつつも、もうしばらく様子を見ようと思う方は非常に多いです。こういった方々にとって、もっとも大切なことは、しばらく経過観察をしていい状態か、あるいは治療をしたほうが良い状態かの判断です。このような方々は、当ホームページのチェックリストのページをご参考ください。治療をはじめなくてはいけないことは分かっているけれど、なかなか治療するために足が向かない場合、思い切って受診しましょう。「このまま治療しないで放置してていいのだろうか」と心配しながら日々過ごすよりも、専門的な診断を受け、医学的に適切なアドバイスを受けることで、安心感も大きく違ってきます。
心の病の特徴は、患者様一人一人が違うということです。同じ病名であっても、患者様を取り巻く環境も違えば、患者様の性格もそれぞれ異なります。治療がうまくいくためには、1、正しい診断、2、正しい治療法、3、適切な環境作り、4、患者ー医師の信頼関係が重要です。医療のどの分野でも、この4つの要素は大切ですが、心の病に関しては特に3、4が大切です。環境因子が強い場合、環境への取り組みがとても大切なのは言うに及びませんが、性格因子が強い場合であっても、周囲の対応を変えることで本人の状態が変わってくることがあります。患者ー医師の信頼関係も、治療に大きく影響するものです。心の病は、本人も周囲も、時にくじけそうになることもあります。そのとき、医療者が心の支えになることで乗り切れることもあります。病気の種類によっては、医師が答えをすぐに示さず、患者様自身の答えが育まれるのを待つこともあります。目をそらしていた問題について整理したほうがよいときもあります。このとき、最も根底に患者ー医師の信頼関係がなければ、治療はうまくいきません。
真摯に患者様のお話に耳を傾けつつ、本人と周囲の方々と医師とが信頼しあい、協力して治療にあたっていく。このことが、当院で最も大切にしている理念です。治療以外の面でも、患者様のご負担を出来るだけ軽減し保険適応範囲内で治療すること、プライバシーを重んじる設計にすること、待ち時間・会計時間を出来る限り短縮することなど、患者様の利益をつねに念頭に置いております。
【 医学博士 伊藤 雅之 】
【 職 歴 】